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2019.12.12 | 健康

感動はリアルな体験から生まれる

オリンピック目前! 体を動かすことは楽しい【第1回】


2020年に再び日本で夏季オリンピックが開催されます。56年ぶりのことです。

この56年間、子どもたちが体を動かす絶対量が減少し、運動能力は大幅に減退しています。

この事態に警鐘を鳴らし、幼い頃に「体を動かすことは楽しい」という体験をして、運動を習慣化させることが子どもたちの一生の宝になると提言する、朝日大学 白石豊教授にお話を伺いました。


大きく変わった子どもの運動環境


前回オリンピックが開催された1964年当時、私は小学5年生で野球少年でした。テレビで観戦していて、世の中には野球や相撲以外にもたくさんのスポーツがあることを知りました。


その頃、スイミングスクールや体操などができるスポーツクラブも誕生。その数は急速に増え、大人はもちろん、子どもたちの運動環境も飛躍的に向上していったのです。


にもかかわらず、全国の学校で実施される体力・運動能力調査の結果(出典:スポーツ庁)は1985年頃をピークに年々低下していきました。

例えば、小学生の50m走の平均タイムは、1985年は男子で9.05秒でしたが、31年後の2016年には9.38秒に低下しています。女子も同様に、9.34秒から9.61秒へと下がっているのです。その他にも小学生のソフトボール投げの平均は、男子が29.94mから22.41m、女子が17.60から13.87mへとそれぞれ31年間で後退しています。


幼児期からの5年間が鍵を握る運動能力発達


運動能力の発達段階とその時期はほぼ決まっています。生まれてから4カ月ぐらいから寝返りを始め、それからズリバイ、ハイハイ、タカバイをします。この時には、立ち上がるための筋肉が鍛えられているのです。


いよいよ二本足で立ち上がるようになると、子どもは、人間が生活していくうえで不可欠な、「歩く・走る」「はう」「跳ぶ」「投げる・捕る」「蹴る」などの動作を並列的に急速に身につけていきます。


このように、赤ちゃんが立ち上がってから小学校に入るまでの約5年間は子どもの運動能力の発達にとても重要であり、十分に体を動かし、運動の基礎を培っておくことが大事なのです。



「体を動かすことは楽しい」は一生の宝


昨今、幼稚園等で子どもたちが遊んでいる様子を見ていると、将来が心配になるほどぎこちない動きが目につきます。脊柱(せきちゅう)起立筋が育っていないために背すじをまっすぐ伸ばして立てない。転んでも“かばい手”が出ずに、顔を直接地面に打ち付けるなど、昔の子どもでは考えられないようなケガも多く見受けられます。


この背景には、子どもたちの楽しみ方が大きく変化したことがあると考えています。私が幼い頃は、“遊び”といったら、近所の子どもたちと野球や鬼ごっこなど、体を動かすことでした。しかし、今や、テレビやビデオ、ゲームといった “体を動かすこと”以外の手ごわいライバルが多数出現しています。 


こうした時代だからこそ、意識して「体を動かすことは楽しい」という体験を子どもの時に味わい、体を動かすという生活習慣を身につけさせたいものです。そういった生活習慣は、体力をつけ、健康を保つだけでなく、ストレス発散にも結びつき、「一生の宝」になっていきます。


感動は、体験によってのみ生まれる


体を動かして感じる「できた」という達成感は、バーチャルな世界で展開されるゲームの達成感とは全く異なります。


感動といった心が動かされることによって、好奇心や気力がわいてきますが、感動は頭であれこれ考えるのではなく、リアルな体験によって得られると私は考えています。


たとえば、先ごろ開催されたラグビーワールドカップの試合は、日本を感動の渦に巻き込みました。あれは、命をかけて生身の人間が闘っているからこそ伝わってきた感動です。どの試合もとれもすばらしいものでしたが、中でも最も強い感動を心に刻み込んだのは、間違いなくきつい練習を積んできた「ブレイブブロッサムズ(ラグビー日本代表の愛称)」のメンバーたちです。


一生懸命に何かをやったという体験こそ、本当の自信となり人の心を動かしていきます。自分の体を使って何かを成し遂げることは、老若男女を問わず楽しいことなのです。


大事なのは「環境」! 生活習慣の確立を


運動に限らず、勉強も最大限に能力伸ばすには、正しい生活習慣を確立することがとても大事です。


私はこれまで40年近くにわたって、日本のトップアスリートたちに技術やメンタル面の指導をしてきました。そんなトップクラスの選手たちで、練習やトレーニングで手を抜くような選手は一人もいません。しかし、最終的には勝敗は分かれてしまうのです。


その要因は、練習の量や質ではないと私は考えています。最も大切なことは、練習以外の日常生活の過ごし方にこそあります。食事や睡眠、勉学や仕事などをいかにきちんと行うことができるかにかかっていると思うのです。


そしてこうした習慣は、トップアスリートだけに必要なことではありません。子どもの頃から正しい生活習慣を身につけることが必要なのです。


ですから私は、たとえばスポーツクラブで一般コースから選手コースへと移りたいと頑張っている小学3、4年生の子どもたちに、「スポーツが上手になりたかったら、明日からお母さんに起こしてもらうのではなく、自分で目覚ましをかけて自分で決めた時間に起き、一日をスタートできるようにしなさい」と話したりします。


十分な睡眠をとり、朝ご飯を含めて栄養のある食生活をし、きちんとした生活習慣を身につけることが、将来の大きな飛躍につながることをお父さんやお母さんにも知っていただきたいと思います。