水を通してココロ・カラダぐんぐん!お母さんたちの子育てを応援するマガジン

2018.04.20 | 育児

幼少期に育てたい力 連載スタート!

子どもたちの「21世紀を生きる」力の育成を主眼に置いた新しい方針が2018年4月から採用されています。

保育士や幼稚園教諭が教育や指導の指針とし、子どもたちの成長の目安となる能力についてまとめられている「保育所保育指針」、「幼稚園教育要領」ならびに「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」が10年ぶりに改正されたのです。


子どもたちが、「幸せ」な人生を送るために、幼少期からどんな力を育み始めればいいのでしょう。

前回の「笑って子育て! お母さまのストレスマネジメント」に引き続き、育児学の専門家で白梅学園大学学長の汐見稔幸さんに伺いました。

全5回シリーズでお届けします。


1回
21世紀を生きる子どもたちのための幼児教育とは



Q.21世紀を生きる子どもたちのための幼児教育とはどのようなものなのでしょうか。


保育園や幼稚園、小学校の教育のねらいは、ともに子どもたちが社会でしっかり歩んでいくために必要なことを身に付けることです。


子どもたちが世に出ていく10年後、20年後の社会では、自動運転が一般化して、買い物はネット上で簡単にすませることができるかもしれません。

人工知能(AI)の普及によって、いろいろなものを簡単に手に入れることができるようになると考えられています。

そうなると、人間が従事していた仕事がAIに取って代わられ、現在存在する仕事の半数は10〜20年後にはなくなってしまうとも言われています。


AIの一般化は、「人間さん! 私たちAIにすべてお任せください。あなたたちは頭も心も使わなくていいですよ」と告げられているとも捉えられます。

果たしてそれで、人間は幸せなのでしょうか。


Q.では、汐見先生が考える人間の幸せとは何なのでしょうか。



人間は、実際に自ら体を動かして体験したり、「ああでもない!」「こうでもない!」と頭を働かせ最後に「わかった!」という感覚を手にするのが大好きです。


また、人の役に立つと幸せを感じ、逆に人間関係がうまくいかないとイライラする。

つまり、人間関係が生きるうえで重要な位置を占めているのです。


このように人間関係はとても大切なのに文明の方向性としては、人との付き合い方を練習する場がどんどん減ってきています。

にもかかわらず、社会が複雑になればなるほど、社会に出て見ず知らずの人と上手にコミュニケーションをとることが求められるのです。

身の回りのことは他人や機械に頼らず自分ででき、一生懸命考えて「わかった!」と感動し、好きなことを見つけてそれを探求していく。

さらに他者と協力していくことが人間の幸せには欠かせません。


ですから、“考えずにすむ”“自発的に動かずにすむ”という文明に依存してしまうと、その文明が壊れたらどうにもならなくなってしまう人間がでてくるのではないか、と危惧しています。

自分の頭で考え、工夫し、提案・討論を楽しめる能力、豊かな思考力、柔軟な発想力。

自分で確かめないと気がすまなくて、誰から言われなくても自分が面白いと思えることを積極的にやれる力。

人と関わることが大切だ、楽しいと知って率先して人間関係を構築する力。

こういった人として生きていくための資質の基礎を幼少期に築くことが大切になってきます。

また、現代では、乳幼児期から目的をはっきりと掲げ教育に取り組むことが重要だとわかり、世界的にも主流となってきています。

そういったことを背景にして「保育所保育指針」「幼稚園教育要領」、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」は改定されています。

Q.より一層保育園・幼稚園での教育が大切になるということですか。


計算ができ、漢字が書けるといった認知能力といわれる知的な教育は就学後に、必要に応じてやることになります。


「わかんないから、もう止め!」と投げ出さないで、「よーし、なんとか頑張ってみよう」とか「やり方を変えたらできるかな」と自分で楽しみながら工夫して、難しい課題に対しても諦めることなく成し遂げる粘り強さ、忍耐力(やり抜く力)


万が一失敗しても「大丈夫」「次は成功するよ」と気持ちを上手にコンロールする力(自信・楽観性)


好奇心があってやりたいことがいっぱいある心。人と上手にコミュニケーションしながら協力していく力(社会性)


そういった、いわば「もっと向上したい」という姿勢を支える気持ちや能力は子どもの大きな財産になります。

こういった能力は認知能力とは異なり「非認知能力」と呼ばれ、乳幼児期に基礎が育つということがわかってきました。


遊びには、非認知能力のさまざまな要素がふんだんに盛り込まれています。幼児教育の基本は遊びです。

「遊びをつくり出し、みんなで遊ぶ」ということが楽しくて仕方がないというような幼少期を過ごせれば、それが豊かな人生の種となるのです。


自分自身に確かな自信をもち、好奇心にあふれていて、好きなことに熱中して楽しめるという環境づくりや教育を幼い時から保障していくことが大切です。

そういう意味でも幼児教育の重要性はますます増しています。

幼少期に身につけた非認知能力は、一生の宝物なのです。


汐見稔幸(しおみ としゆき)さん プロフィール

1947年、大阪府生まれ。白梅学園大学・白梅学園短期大学学長、東京大学名誉教授。東京大学大学院教育学研究科教授を経て、現職。専門は教育学、教育人間学、育児学。『さあ、子どもたちの「未来」を話しませんか 2017年告示 新指針・要領からのメッセージ』『人生を豊かにする学び方』など著書多数。新しい保育所保育指針についての改定の審議を行ってきた社会保障審議会児童部会保育専門委員会の委員長を務め、21世紀を生きる子どもたちが身に付けたい力について様々な視点から検討してきた。


第2回目は、
「幼児教育における『5領域』って何ですか?」です。

どうぞお楽しみに。